高速道路の通るビル

高速道路が通るビル

梅田にそびえる、ゲートタワービル(現TKPゲートタワービル)。
ビルの中を阪神高速道路が通るという大変珍しい構造になっており、毎日、沢山の車がビルの中に吸い込まれるように走っています。
しばしば、珍しい風景として取り上げられるこのビルは、一体どのようにしてできたのでしょうか。

なぜこのような構造になったのか?

 前面道路、横の高速道路など限りある土地の中で、有効に使える形が、丸い形でした。
 当時は、昭和の終わりから平成元年頃、土地の価格が急速に上がった、いわゆるバブルの頃でした。まだパソコンも大型でWindows95の発売前の時代で携帯電話も普及前でした。弊社も老朽化した建物を建て替える必要がありました(2023年に末澤産業は創業130年目を迎えました)。大阪駅に近いLPガス充填所として、公共交通機関のタクシーが一日あたり1500台も毎日、充填に訪れており、必要とされていました。これは当時、普通のガソリンスタンド1か月分を3日で充填する忙しさだったと言います。
 LPガスは、危険物にあたる高圧ガス取締法の規制の枠の中で安全性の為、必要な面積や設備を備えなければなりませんでした。当然ですが、安全のためかなり規制があります。

 そんな弊社の建て替え計画が進むなか、阪神高速道路公団も都市開発のなかで市民の交通の利便性や将来性を見すえて、定められた梅田出入口の計画を実施しなければなりませんでした。しかし、末澤産業の移転となると、他社ではそれだけの量をカバーできる充填所がなかったため、公共交通用の充填所を備えた施設を、都市の中心地に見つける必要がありました。充填設備を備えた土地を見つけようと、数年、当時の関係者の皆さんが色々な物件を探してくださったそうです。
ですが、やはりバブル期に充填所の利便性を備えるこれだけの土地を他に見つけることはできなかったと聞いています。

 譲らなかったというより「譲り合った」結果、どうすればよいのか皆が知恵を出し合った結果の、大阪らしい先駆的なアイデアで高速道路がビルの中を通るという、大変特徴的なこの建物が完成しました。

 余談ではありますが……
 形は正22角形、当時の西梅田再開発に合わせ大阪駅の玄関口になるにふさわしい、石貼りの高級感のある建物仕上げです。建築に「アメニティ」、快適な環境や魅力あふれるデザインが求められてきた頃だったのでゲートタワービル(現TKPゲートタワービル)も、エレベーターを外付けにしシースルーのエレベーターで未来感を出したデザインになっています。
 トイレ設備も、当時はまだ普及していなかった水洗音の設置や自動洗浄などビル利用者向けに最先端の設備を使い始めた建物です。